IT紛争を解決する弁護士 | メディア掲載

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『ITpro SPECIAL』TOP Interview(日経BP社 2009年12月22日〜2010年1月25日)より転載

TOP Interview ユーザーとベンダー双方にメリットのあるIT紛争解決のアプローチを広めたい

LawとTechnologyの頭文字をとり,ITと法律技術の融合を標榜する弁護士法人 エルティ総合法律事務所。同事務所では,新たなIT紛争解決の手法を提供する「LT式ITソリューションサービス」を展開。同サービスがIT分野の紛争をどのように解決し,ユーザー企業とITベンダーにどのようなメリットをもたらすのか。同事務所の所長であり,弁護士とシステム監査技術者の資格を持つ藤谷護人氏に話を聞いた。

弁護士法人 エルティ総合法律事務所
所長
弁護士/システム監査技術者/
公認システム監査人
(東京弁護士会所属)
藤谷護人(ふじたにもりひと)
写真

——法律事務所でありながら“ITベンチャー企業”を自認されていますが,どんな意味がこめられているのでしょうか。

1992年4月に,ITと法律の融合を目指して弁護士を開業してから,数多くのIT分野の紛争解決に当たってきました。その経験の中から今までなかった,紛争を解決するための独自のソリューションを逐次開発し,実践してきました。

2009年10月には,「IT赤字プロジェクト解決支援サービス」と「ITトラブルプロジェクト解決支援サービス」をサービスメニューに加えたことで,「LT式ITソリューションサービス」のフルラインアップが完成しました(図表1)。この「LT式ITソリューションサービス」は,一方の代理人型業務である事後的紛争解決と中立的要素を含むコンサルティング型業務の未然紛争防止,中立型業務の裁判外紛争解決(IT-ADR)の3つの分野から構成されています。特に,未然紛争防止と裁判外紛争解決は,裁判に頼らない紛争解決を目指すもので,これまでにないメリットを提供できると自負しています。

図表1
(画像のクリックで拡大表示)

紛争解決の経験から生まれた 新たなソリューションサービス

——どんなことがきっかけでソリューションを開発しようと考えるようになったのでしょうか。

転機となったのは,250億円規模のITプロジェクトのトラブルにかかわったことです。私たちが入ることで,受け入れテストの段階で訴訟せずに解決できました。訴訟になったら,結論が出るまで何年もかかり,その間にもITコストは発生します。話し合いで解決できたことは,ユーザー企業とITベンダーの双方に大きなメリットをもたらしました。

私は,非常勤で東京地方裁判所でIT分野と建築分野の調停専門の裁判官を2年間勤めました。この2つの分野は規模や請負期間,契約形態,仕事の進め方など似ている部分が多いのですが,建築は4000年の歴史もあり,様々な紛争解決手段や専門的な裁判官もいます。しかしIT業界はたった60年の歴史しかなく,解決手段が訴訟しかないのに,ITに詳しい裁判官もいません。そこで,ITと法律に精通した専門家として,今までにない有用で有効な解決手法を提供しようと考えたのです。

——これまでのIT紛争の解決方法では足りないところが多いということなのでしょうか。

訴訟は最終手段であり,相手とは喧嘩別れになりますし,時間もかかります。また,弁護士の多くがITに弱いことも考慮しなければなりません。しかも,裁判は「弁論主義」の世界です。互いに攻撃防御の闘いで,勝つか負けるかだけの仕組みです。システムが動かない理由は,中規模のシステムでも100〜300になります。300の争点について弁論主義で攻撃防御をしていたのでは,時間がかかるのは当然です。

——では「LT式ITソリューションサービス」は,どのように進めるのですか。

まず,ユーザーとベンダー共同で「紛争解決のためのプロジェクト」を作り,そこに私たちがメンバーの一員として加わります。双方からは,PM,担当SE,統括営業,IT部門および現場担当者らに出て貰います。そのプロジェクトで,300の争点について,「紛争調整シート」と「時系列表」(図表2)を共同で作成し,システム開発技術的な論議を丁々発止とぶつけ合います。すると双方が納得できる「技術的真実」が見えてきて協議が整います。こんなタフな話し合いを1〜2週間に一度の日程で進めるのです。フラットなところでお互いが議論するのですから,方法さえ工夫すれば,驚くほどスピーディに話を進めることができます。100〜300の争点でも,3〜6カ月で解決できます。訴訟だと最低でも3〜5年は必要でしょう。

——なぜ,貴法律事務所でそのようにユニークな「ITソリューションサービス」の提供が出来るようになったのですか。

私自身が,もともと東京都千代田区役所で約10年間システム開発を経験し,弁護士でありながらシステム監査技術者でもあります。この2つの資格を両方持っているのは,日本の弁護士2万9000人の中で,僅かに2名しかいません。しかも,もう一人は当事務所のパートナー弁護士の菅沼聖也(東京弁護士会所属)です。さらにアソシエイツ弁護士の井上伸子(東京弁護士会所属)は第一種情報処理技術者,大倉健嗣(第一東京弁護士会所属)はソフトウェア開発技術者,そして片山直紀(東京弁護士会所属)は基本情報技術者です。このように弁護士全員がシステム開発の資格と現場経験を有しているのです。事務局スタッフもIT に精通しています。さらに当事務所は,経済産業省のシステム監査企業台帳と情報セキュリティ監査台帳に登録しています。こんなIT専門性を有する法律事務所は当事務所だけでしょう。こうした特色を活かして,IT分野の紛争を数多く手掛け,訴訟によらない紛争解決のための独自のノウハウを蓄積し,解決の考え方・仕組み・手法にまで纏め上げたのが「LT式ITソリューションサービス」です。

オンリーワンのサービスを通して IT社会の発展に貢献していく

——話し合いによる解決は,短期間での紛争解決といった側面以外に,どんなメリットをもたらすのでしょうか。

実はIT紛争の特色は,ユーザーとベンダーとの間に,訴訟によって喧嘩別れしたくないという経営戦略的要求が大変強いことです。両者の間で,数億から数百億という巨額の開発費のシステム開発が開発途上で頓挫し喧嘩別れし開発中止となってしまったとすれば,その両社にとっての経営的ダメージは甚大です。さらに紛争システムの他に開発済みシステムの保守の信頼関係維持の必要もあります。「LT式ITソリューションサービス」では,このような当事者双方の想いを大切にして,敵対構造ではなく信頼関係を保ったまま話し合いを進めることができるのです。大きな開発プロジェクトも中断することなく,協議による解決を共同で進めていけるのです。これは,ユーザーとベンダー双方に経営戦略上画期的な紛争解決の手段を提供するものなのです。

——最後に今後の抱負をお願いします。

私たち全員が,「我が国のIT社会に貢献する」という“熱いスピリット”を持っています。「技術的真実主義」に拠り所をおいて構築した「真実についての共感に基づく話し合い解決手法」は,私たちだけができるオンリーワンのサービスです。しかも当事務所は,このような社会に貢献できるITリーガルサービスを今後半世紀以上にわたって提供し続ける体制を整えています。こういう事務所,発想,方法があることを知っていただき,ぜひ,経営に役立てていただきたいと思います。

図表2
図表3
図表2「 紛争解決のためのプロジェクト」で使用される
「紛争調整シート」と「時系列表」のサンプル
(画像のクリックで拡大表示)

日経BP社の許可により「ITpro Special(2009年12月22日〜2010年1月25日実施)」から抜粋したものです。
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